【開催中

 

 


 

 

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【天野太郎氏の展覧会評】 

天野太郎(インディペンデント・キュレーター)

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見つめ直される日常

ユ・ソラは、韓国の大学で美術(韓国の大学には複数専攻という制度があり、ユは、繊維美術ファッションデザイン科と彫塑科を卒業)を学び、その後、東京藝術大学大学院彫刻科を修了し、その流れを汲みながら立体的な作品を制作している。実は、韓国の大学では、最初にファッション・デザインを学ぼうとしたが、デザインそれよりも実際にモノを作る方へ興味が移行して彫刻を学ぶことになった。
今回の出品作の制作年は、2012年から最新の2021年に及んでいる。韓国の大学を2011年に卒業し、東京藝術大学を2020年に修了しているので、ほぼその間に制作された作品ということになる。
ユが、彫刻を学んできたことは既に触れたし、実際に今回の出品作にも、木彫の作品が「帰るところ」(2019)など数点あるが、その他の作品は、伝統的な意味でも彫刻とは別の文脈を有しているように思える。彫刻の作品として自立したものではないこと、素材の混合性(mixed media)であることなどが主な理由である。一点一点が独立した作品もあるが、いつくかの立体によって構成されている「普通の日」(2019-2021)は、インスタレーションそのものが一つの作品として示されている。
また、作品に、白地(木綿のニット地が基本で、シルク、ポリエステルの混紡も使用)の支持体の中に中綿を入れ、そこで生まれた面に黒い糸が縫い込まれているのも特徴的な点である。既成の支持体ではなく、自らが作り出す過程を踏んでいるのも、後述するが興味深い点だろう。

 ところで、今回の個展のタイトルは、「普通の日」となっている。実は、これまでの作品のタイトルを見てみると「帰るところ」、「些細な記念日」、「引っ越し」といったように、日常生活に纏わる言葉が多いことに気づく。何か日常から離れたテーマを設定して、それに従って未知の領域に踏み込み素材を集めるのではなく、あくまでも日常の生活の範囲の中で得たアイデアやモチーフを作品化している。

こうした普段の生活、日常の生活への眼差しは、ユのこれまで遭遇した幾つかの「事件」が大きく関わっている。中でも、2011年に大学の卒業展でもあった韓日合同卒展で横浜に来日したときに、3.11の東日本大震災を経験したことだった。当時震災を経験したものであれば誰もがそうだったと思うが、東北で一体何が起きたのかは時間が経過して事後的に知ることになった。ユも、その頃は、まだ日本語の理解が出来ず、結局帰国後何年もかけて事の次第を認識することになった。もう一つは、2014年に韓国の大型旅客船「セウォル(世越)」が仁川からチェジュ島に向かう途中の全羅南道珍島郡の観梅島沖海上で転覆・沈没した事故だった。おりしも多くの修学旅行の高校生が乗船しており、乗員470名余りのうち、大半の300名近くが亡くなった韓国史上最も悲惨な事故の一つとなった。しかも、事故の様子が、テレビなどを通じて報道され、死を覚悟した学生が家族に送った携帯からの画像の配信も、ユ自身自宅に居ながら何も出来ない事の無力感を感じさせることになった。ここでも、大勢の死者が、その家族や家族の居る家への強い思いを抱きながら死を迎えざるを得ない事態が、その後のユの日常=平安への思いを刻むことになった。

 こうした言わば事件のみならず、凡庸なる日常そのものがユにとって作品制作を続ける重要な動機付けでもあり、モチーフともなった。とりわけ、2007年に雑然とモノたちが置かれた自分の部屋をボールペンで描いたのが、「日常」を取り上げることになった最初の作品であり、同時に、そのボールペンで描かれた線が、その後、ボールペンではなく綿やシルクやポリエステルといった糸によって描線を表現するようになる。それは、実際に使用している布も含め、より日常の生活を想起させるからという理由だった。先に触れたように、ユは、作品の素材を出来るだけ自身で制作している。そして、糸も意図的にほつれを生むことで、鑑賞者の移動よって、かすかに動くそのほつれが、日常という当たり前の風景ながら、ちょっとしたことで危うい事態を招くことを暗示している。

 自明だが、日常という言葉には、それを享受する当事者の存在が不可欠だ。自分自身の風景である日常が、しかし、ここでは、ユの提案する「日常」によって俄に少し距離を置いた世界として示されることになる。時間が淡々と流れる日常をしかし、改めて、見つめることを人はしない。しない、というよりは、するための契機はやがて訪れることも確かなことだ。身に降りかかる不幸も含め、途端に馴染みのある風景がよそよそしい佇まいを見せることも事実であり、あるいは、自分の持ち物である様々な日常のモノがその所有者を失うこともまた想定される事態だろう。

 今回、偶然とは言え、コロナ禍での展示となり、ユ自身というよりは、この展覧会の受容者側にとって、明らかに普段の「普通の日常」を前提とした鑑賞とはならなかった筈だ。展示室入り口に設けられたコーナー「私たちの住んでいる家」では、参加者が日常生活の場所を振り返り、住んでいる部屋の間取り図を描くワークショップが設置されている。ここでも、改めて見慣れた、そして振り返ることのなかった日常を考え直す契機が用意されている。

 ユの一見穏やかな表情の作品は、人の営みの僅かな変化で生まれる精神的あるいは肉体的な騒めきを、穏らだからこそ、より深く我々に刻ませることになる。

 


 

A-Lab Exhibition Vol.27

 YU SORA(ユ・ソラ)「普通の日」

 

  会期=2021年2月23日(火・祝)-2021年3月31日(水)
開館時間=(平日)午前11時~午後7時、(土・日・祝)=午前10時~午後6時
 休館日=火曜日(2月23日(火)は開館)
 入場料=無料
  主催=尼崎市
  協力=ベイ・コミュニケーションズ

 

 この度、あまらぶアートラボ「A-Lab」(えーらぼ)では、「普通の日」展を開催します。出展作家で韓国出身のアーティストYU SORA(ユ・ソラ)が近年取り組んでいる作品は、原寸大の家具や電化製品などを真っ白な布と黒い糸で包み込む世界です。一見するとクールで非日常的な空間が広がっているように見えます。しかし、その空間に足を踏み入れると、人の息遣いと温かさ、優しさのようなものを感じます。それは、モチーフが、私達の身の回りにある見慣れたものだからかもしれません。柔らかい布で覆われているから、または、布を縫う手仕事から手触りを感じるからかもしれません。根底に流れているのは、彼女が紡いでいる、生きている「普通の日」があるからではないでしょうか。そこには確かな日常があり、「生」があります。真っ白な布に黒い糸。色が着いていないそれらは、観た人が色を着けた「普通の日」を入れる容れ物の役割を持っています。

 コロナ禍以降、新しい日常という言葉が聞かれるようになりました。日常に新しいや古いという概念がふさわしいかわかりません。しかし、スマートフォンでコミュニケーションを取り合うことは、わずか十数年前では日常ではなかったように、私達の日常が変わり続けてきたことは間違いないです。日常を作っているのは「普通の日」の積み重ね。日常が変わっても、そこに人は生きています。続いていく「普通の日」がそこにあります。彼女の作品は縫い終わりの処理をしていません。そう、何も終わってないのです。「普通の日」はそれぞれの時間の中でずっと続いているというメッセージのようにも感じます。 A−Labは、1階が保育所であるように、人々が日常を過ごしているまちの中に埋没しているアートスペースです。生活感を感じる普通の場所でYU SORAが作り出す「普通の日」を感じて欲しいです。今回、A-Labでは立体作品だけでなく、布を支持体にした平面作品、木彫作品、そして尼崎の風景のドローイングなどが展開されます。

  

【関連イベント】

名称未設定-1.jpg無人ワークショップ「私たちの住んでいる家」

 展覧会会場で参加者は自らの日常生活の場所を振り返り、住んでいる部屋の間取り図を描きます。広さを間違えたり、描き忘れるスペースがあるかもしれません。普段の生活の中で見ているからこそ、分からなくなってしまうこともあります。じっくり考えて描いたり、家族で話し合いながら描いたり、いつもの生活している場所の見方が変わるでしょう。そして、知らない誰かの部屋を覗き、どんな人か想像したり、共感したり、似ている人を探したりしてみてください。

*新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、ワークショップは無人で行われます。ご自由にご参加下さい。

 
【注意事項】 
会場では新型コロナウイルス感染予防および拡大防止対策を実施しております。
会場入口付近にも設置しておりますので、ぜひご鑑賞前にご一読いただければ幸いです。
皆様のご理解・ご協力をお願い致します。 
 

 

【出展作家プロフィール】*作品画像は参考画像です。展示されるものとは限りません。

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撮影 加藤甫

YU SORA(ユ・ソラ)

1987年生まれ。韓国、京畿道出身。弘益大学彫塑科を2011年卒業、東京藝術大学大学院 彫刻科 修士課程を2020年修了。 白い布と黒い糸を使い、日常をテーマとした作品を作っている。家の中のものや姿を通して人の存在や生きている時間を語る。2010年からソウルと東京を中心とし、様々な展覧会に参加。日本での主な展覧会は「黄金町バザール2013」、個展「引越し」(YCC Gallery、横浜、2017年)、 Tokyo Midtown Award 2018、ROPPONGI ART NIGHT2019など。

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YU SORA |『帰るところ』| 2020 撮影 加藤甫

 

 

 
 

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YU SORA |『帰るところ』| 2020  撮影 加藤甫

 

 

 
 

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YU SORA |『Street Museum 2019』 | 2019  撮影 加藤健

 

 

 
 

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YU SORA |『些細な記念日』 | 2018 

 

 
 

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YU SORA |『引越し』 | 2017 撮影 加藤健

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 


 

A-Lab@Home、第2弾実施いたします!!】

 あまらぶアートラボ「A-Lab(えーらぼ)」ではこれまで若手アーティストによる展覧会やワークショップなどを開催しています。昨年度からは、芸術をより身近に感じ、楽しんでもらうため、市内各地に出向いてワークショップを開催する『A-Lab Go』を行っています。

 今回の新型コロナウイルスにおいて、緊急事態宣言は解除されましたが、未だ気が抜けない状況であり、感染拡大防止のために人を集めてワークショップを開催することが難しい中で、アートの力を活かしていく方法として、おうちでアーティストとふれあいながら楽しめる企画として、動画配信による“ワークショップ”の第2弾を実施します!

これまでA-Labで展示やワークショップなどを開催していただいた方を含む6組のアーティストが身近なもので作る工作教室や薪能についてなど外出のできない子どもたちに向けた、動画による“ワークショップ”を配信します!

また、前回に引き続き、オープニングとエンディングの音楽は、尼崎市在住であり、昨年ジュネーブ国際音楽祭の作曲部門で優勝した高木日向子さん作曲です。ぜひはじまりからおわりまで注目してご覧になってみてください!

  参加アーティストは、飯川雄大さん、築山有城さん、遠山敦さん、野原万里絵さん、薬師川千晴さん、能楽コーディネーターの山村貴司さんの計6名の方々です!

6月6日から、3週間、毎週2組ずつ、YouTubeチャンネル「あまがさき文化芸術情報局」(URL: https://www.youtube.com/channel/UClcR4XK-JIDMiF_9j3-Pmjg)で動画配信していきます。

 

タイトルか画像をクリックしていただくと動画をご覧いただけます。

 ▷6月6日【A-Lab@Home#6】築山有城「水玉封筒を作ろう」

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 ▷6月7日【A-Lab@Home#7】飯川雄大「四コマ漫画を描くぞ!!」

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4コマ特訓シート1のダウンロードはコチラ

画像をクリックしていただくとダウンロードいただけます。

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4コマ特訓シート2のダウンロードはコチラ

3つの画像をそれぞれクリックしていただくとダウンロードいただけます。

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▷6月13日【A-Lab@Home#8】山村貴司「尼崎と薪能 初級編」

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▷6月14日【A-Lab@Home#9】遠山敦「お部屋に浮かぶ、とりモビールづくり」

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 ▷6月20日【A-Lab@Home#10】薬師川千晴「左右対称の切り絵を作ろう!」

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▷6月21日【A-Lab@Home#11】野原万里絵「家を彩る絵・手作りの額」

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そして第1弾のA-Lab@Homeの配信動画もご覧いただけますので、まだご覧になっていない方は是非こちらもチェックしてみてください!!

 
 

 


 

ヴィジュアル・アイデンティティ投票結果発表!

A-Lab Exhibition Vol.22「アイデンティティのキキ」ではお越しいただいた皆さんによるA-Labのヴィジュアル・アイデンティティ3案の人気投票を行っていましたが、この度結果を発表いたします。

最も投票が多かったのは、グレゴリー・アンボスさんと鈴木哲生さんの案でした。

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